プチ小説「いちびりのおっさんのぷち話 上を見たらきりがない編」
わしはちいこい頃に産経新聞のおおきくなったらという欄にわしがおおきくなった時の夢を載せてもらったことがある。おおきくなったら国鉄に入って友達をたくさん作って楽しく人生を送ろうという夢を掲載してもらったんやが、今は全然違った人生を送っとる。父親が国鉄職員やったし、官舎に住んどったから周りが国鉄の職員かその家族ばっかりやってみんな幸せそうやったからそう思ったんやと思うんやが、その後の人生のことを思うと仕事を一生懸命してたくさん友だちを作るだけでは満足せんかったやろうなと思うんや。他にも2つ書いてもよかったなと思ったことがある。一つは幸せな家庭を築くこと、もう一つは誰にも負けん趣味をもつこと。家族は結局甲斐性なしで持てんかったけど、その代わりに趣味だけは生涯通じて誰にも引けを取らんものをと思って頑張って来た。高校生の時に部活をした写真や船場に勧められて聴き始めたクラシック音楽は生涯を通じての立派な趣味やと思うとる。80才になっても90才になっても100才になっても続けられる趣味やからきっとすることがなくて困ることはないと思う。家族があったら、いろんな楽しみが待ってるし、生き甲斐も持てる。だから出来たら持った方がええねんけど、残念ながらわしは持てんかった。これはわしの生活力がなかったからやが、いつまでも悔やんでいてもしゃーないと思うようになって、感動は伴わないかもしれんが一時的な楽しみかもしれんが何かのめり込むもんを持ち続けておれば人生のしんどい時も楽しいことを思い出して乗り越えられるんちゃうかと思うようになった。それで月1回の撮影会と東京の名曲喫茶めぐりは続けとる。最近は働かんと貯金を切り崩して生活しとるから遠出がでけんようになったけど、年に1回は東京渋谷まで出掛けて、名曲喫茶ライオンで船場からもろうたフェレンツ・フリッチャイ指揮ベルリン・フィルのドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」を掛けてもろうとる。船場もわしと同じで生涯家族は持てんかったが、趣味を楽しんどるようや。船場は最近はお金がないんで旅行に行けないんですと言っとったが、写真、クラシック音楽観賞以外にも、クラリネット演奏、読書、レコード収集、小説やエッセイを書くことを楽しんどるからこれからもささやかやけどそれなりに満足できた人生を続けることやろう。そのあたりのことを本人はどう思っとるんか訊いてみたろ。おーい、船場ーっ、おるかーっ。はいはい、にいさん、いろいろぼくのこと話してくれはりましたけど、ぼくには今月で90才になった母親がいます。80代後半に2度も全麻の手術をして今も元気なんですから、手術をしたことがない私はいつもすごいなーと思っているんです。90才になっても私よりしっかりしてるなーと思っていてそれを励みにして頑張っているんです。そうか、そんな偉いお母さんがおるんやったら幸せと言えるんとちゃうか。ええ、そのとおりです。ほんでお前の趣味のことやけど、こっちはお前はどう思っとるんや。いろいろ不満はありますが、何とか続けられているのでこれからも頑張ろうと思っています。写真もクラリネットもLPレコードコンサートも小説やエッセイをホームページに掲載することも。不満て言うたけど、何が不満なんや。だってお金がないんですから、にいさんと同じように貯金を切り崩し爪に火を灯して頑張っていますがしばらくしたらそれもできなくなります。なので懸賞小説で賞をもらうということがないと旅行にも行けません。年金生活者になると活動を縮小せざるをえず、趣味のいくつかをやめないといけなくなるでしょう。まあそれでも趣味は少しくらい減っても大丈夫やろ。お母さんを大切にして、お前も長生きしたらええんや。そうですね、頑張ります。