プチ小説「長い長い夜 37」

十郎は学校を出たところで山北から声を掛けられ、一緒に帰ることにした。山北は久しぶりだなあと言っていたが、実際最近はなぜか他の友人と話をしていて一緒に帰らなかった。山北は最近は名演奏家のレコードを洋子と一緒に聞いていると言った。十郎は、ピアノだとホロヴィッツ、ヴァイオリンならハイフェッツ、指揮者だとオーマンディかなと言ってみた。
「うーん、そうだなぁ、アメリカの演奏家もいい録音をしているけど、やっぱり本場はヨーロッパ、特にドイツ、イギリス、フランスだと思う」
「そうなの、ハイフェッツのチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、ホロヴィッツのベートーヴェンの三大ソナタ、オーマンディのシベリウスの交響曲第2番なんかはすばらしいと思うけど」
「確かに今山根君が言ったのは名演奏だけど、ヨーロッパの演奏家の名演奏を探せばその100倍は名演がある。指揮者も演奏家もたくさんいる。ただアメリカの演奏家はレコード会社がたくさん宣伝するから、名演であることを耳にする機会が多い」
「でもドイツにはグラモフォン、イギリスにはデッカとEMI、フランスにはエラートという大きなレコード会社があってそれぞれ人気の指揮者や演奏家を売り出している。グラモフォンの指揮者ではカラヤンをはじめ、ベーム、クーベリック、アバド、カルロス・クライバー、ジュリーニ、ピアノではケンプ、ポリーニ、アルゲリッチ、ヴァイオリンではシェリング、ミルシテイン、チェロではフルニエ、オーケストラではウィーン・フィルとベルリン・フィルのレコードの多くがグラモフォン盤だと言える。デッカだとショルティ、メータ、ケルテス、EMIだとクレンペラー(フィルハーモニア管弦楽団)、バルビローリ、エラートだとパイヤールが指揮した名演がレコードになってる。確かにRCA,コロンビアはオーマンディやワルターの名演を残していて広告をよく目にするけれど。アメリカだとセル指揮クリーヴランド管弦楽団の名演もある。ぼくはパレ―指揮デトロイト交響楽団も好きだなあ」
「パレー指揮デトロイト交響楽団のラヴェルの「マ・メール・ロワ」は好きだけど、それよりもモントゥー指揮サンフランシスコ交響楽団のベルリオーズの幻想交響曲の方が好きだなあ。ヨーロッパにはウィーン・フィル、ベルリン・フィル、ロンドン交響楽団、パリ管弦楽団以外にも、ドイツではドレスデン、シュトゥットガルト、ミュンヘンのオーケストラ、フランスではパイヤールが指揮したパイヤール室内管弦楽団、イギリスではバルビローリが指揮したハレ管弦楽団も名演を残している」
「イギリスならマリナー指揮のアカデミー室内管弦楽団もいいと思う。そうだ忘れていた。プィリップスレーベルのハイティンクが指揮したアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団もたくさんの名演を残しているよ」
「それならアンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団がデッカに名演を残している」
「グラモフォンだとジュリーニ指揮ロサンゼルス・フィルも名演を残しているよ」
「クーベリックのバイエルン放送交響楽団も。でもクーベリックはベルリン・フィルやウィーン・フィルやアメリカのオーケストラもたくさん共演しているからもっと聞きたいと思っている」
「そうだね、スメタナの「わが祖国」とドヴォルザークの交響曲だけだともったいないね」
「そうは言ってもぼくたちは洋子ちゃんにお願いしてお父さんのコレクションから聞くしかない」
「それからクラシックの名盤が聞けるFM放送は平日のお昼が多いから、祝日くらいしか聞けないね」
「夜に生放送の録音が聞けるけど、ぼくは名演奏家の名演が聞きたいからね」
「デジタルの時代になったら、きっと今と違って生演奏が多くなるんだろうな」
「他のジャンルの音楽がいろいろ放送されるようになると思う。クラシックの番組はちょっぴりになる。だから今からこつこつとクラシック音楽のアナログレコードとそれなりのステレオ装置を買っておかないと・・・」
「正月のお年玉だけでは買えない。どうしよう」
「愛好家のために少しだけ残してくれるさ」