プチ小説「クラシック音楽の四方山話 宇宙人編 103」

福居は母親の介護、付き添いのため1週間大学図書館に行けなかったが、一週間ぶりに四条烏丸から55番のバスに乗って立命館大学図書館に向った。最近は阪急電車の中だけでなく京都市バスの車内でも文庫本を読んでいるが、千一夜物語がなかなか読み終わらないので焦っている。二条駅前のバス停に着くとM29800星雲からやって来た宇宙人が隣の席に腰掛けたが、福居は切りの良いところまで読みたかったので、宇宙人に声を掛けずに先を読み続けた。立命館大学前でバスを降りるとM29800星雲からやって来た宇宙人がうれしそうに福居に声を掛けた。
「イッショケンメイヨンドッタカラ、ヨミオエタンヤロ」
「まさか、この本を読んでも、まだ3巻あります。千一夜物語は長いです」
「トイッテモ、チョウタンノハナシヲアツメタモノデ、コノナカニハ、シンドバッドヤアラジンヤアリババノハナシモアルンヤネ」
「そうです、シンドバッドやアラジンは楽しいですし、今読んでいる第10巻は艶物が多いです。でも中には十字軍との戦いを描いた『オマル・アル・ネマーン王とそのいみじき二人の王子シャールカーンとダウールマカーンとの物語』というのもあります。第3巻から第4巻途中までの千一夜物語の中で最も長い物語です。この物語を読むと両教徒の対立が昔からあったことがよくわかります。それと千一夜物語は重い話もあるということもわかります。読んでいて一番楽しいのは冒険ものですが、これを読むとファンタジー小説のルーツは千一夜物語ではないのかと思ったりします」
「ソンナニオモシロイノヤッタラ、サイゴマデイッペンニヨンダライイヤン」
「そうなんですが、艶物にあまりに赤裸々な表現が多いので阪急電車の中では読みにくいのです。そういう物語が連続すると読み終えるぞという気持ちが萎えるかもしれません」
「ノゾキコムヒトハオランカラ、キニセントヨンダラエエノヨ。ソウセント、イツマデタッテモヨミオエラレヘンヨ」
「わかりました。なるべく早く読み終えるようにします」
「トコロデセンイチヤモノガタリトイウタラ、リムスキー=コルサコフノシェエラザードヤネ。エエレコードアル」
「名盤はアンセルメ盤とカラヤン盤ですが、ストコフスキー盤もいいと思います。個人的に好きなのはマゼール盤(クリーヴランド管弦楽団)、フェドセーエフ盤(モスクワ放送交響楽団)があります」
「サイキンナクナラハッタ、ヤマシタカズヒトサンモダシテイルヤロ」
「ええ、妹の尚子さんとのギターデュオです。楽しめます。是非、聞いて下さい」
「デモ、ツウハンサイトデコウニュウシヨウトオモッタラ、サンマンエンモスルカラヤメタッタワ」