ディケンズの長編小説の登場人物紹介    際立つ人物編   


ディケンズの長編小説の登場人物の中には主人公以上に目立ったり、水先案内人のように物語を導く人物がいます。中でもミス・ハヴィシャムはいつもウエディングドレスを着ていて目立っていますが、いつも同じ格好をしているのかなと思います。

サム・ウェラー  『ピクウィック・クラブ

ピクウィック氏に召使いとして雇われる青年。ピクウィック氏に最大の忠誠を尽くし、ピクウィック氏をしばしば危機から救う。また主人がフリート監獄に投獄された時には、わざわざ借金を作って自らも監獄に入る。比喩を用いて表現する独特な言い回しは、サム・ウェラーならではのもの(ウェラリズム)である。

ブラウンロー  『オリヴァー・トゥイスト』

オリヴァーを保護し、世話する親切な老紳士。オリヴァーが窃盗団の仲間と思われて警察につかまり裁判にかけられた時から、オリヴァーの境遇を憐れみ、助ける。オリヴァーは一旦彼の前から姿を消すが、オリヴァーを匿うローズ・メイリーからの依頼を受けて、モンクス、窃盗団の悪事を暴いて行く。

ヴィンセント・クラムルズ 『ニコラス・ニクルビー』

行き場を失っていたニコラス雇い入れる旅芸人一座の支配人。この一座で俳優として成功したニコラスは、座付き作家として台本も書くことになる。

ネルのおじいさん 『骨董屋』

ネルの祖父で骨董屋の主人。ネルに十分な財産を残してやりたい一心から、一攫千金を夢見て賭博に手を出す。高利貸しのクウィルプから借金をしてまで賭博に入れこむが、完全に破産し骨董屋はクウィルプに差し押さえられ、ネルを連れて放浪の旅に出ることになる。

ジョージ・ゴードン卿 『バーナビー・ラッジ』

国会議員で騒乱の首謀者。小説中唯一の実在の人物。理性を失った木偶人形でガッシュフォードに食いものにされている。

マーティン・チャズルウィット(祖父) 『マーティン・チャズルウィット』

金持ちで利己的な老人。猜疑心が強い彼は一族の誰も信用せず。かわいがっていた孫のマーティンともメアリー・グレアムとの恋愛が原因で喧嘩をする。祖父のもとにいられなくなった孫のマーティンは、自活の道を探さなければならなくなる。

イーディス・グレンジャー 『ドンビー父子』

ドンビーの再婚相手。若い美貌の女性だが、彼女の気位の高さとドンビーの高慢さとが常に衝突する。仕返しのために支配人カーカーと駆け落ちをする。

ジェイムズ・スティアフォース 『デイヴィッド・コパフィールド』

セイラム寄宿学校時代のデイヴィッドの偶像。不覊奔放で誇り高く、下層の人々を蔑視する。エミリーを誘惑して純朴な人々の生活を破壊する。第55章で主人公の目の前で荒波に抗う彼の姿が描かれる。

バケット警部 『荒涼館』

ロンドン警視庁の人情味あふれる刑事。英文学史上初の本格的探偵とされる。タルキングホーン殺人事件の下手人をあげるため、奮闘する。

スリアリ 『ハード・タイムズ』

サーカスの親方。温かい心の持ち主で、父親が家出をした後のシシー・ジュープを保護してやったり、悪事を働いたトム・グラドグラインドが海外に逃亡する際の力になる。

パンクス 『リトル・ドリット』

フローラ・フィンチングの父の事務所で働く活発な色の浅黒い小男。針金のような黒い髪の毛がまるでフォークかヘアピンのように頭から逆立っている。口から息を吸ったり吐いたりする様は、小蒸気機関車が辛い仕事で悪戦苦闘しているように見える。蒸気機関車に例えて、「蒸気をぷうっと吐き出した」「パンクスの機関部は喘ぎ喘ぎ動いていた」「大真面目な顔をして数回蒸気を吐き出し、シュッシュ、ポッポと去って行った」と言った表現がしばしば見られる。

ジャーヴィス・ロリー 『二都物語』

信頼の厚い、老齢のテルソン銀行の行員。マネットがバスティーユから釈放された後、マネットの娘ルーシーを伴ってフランスに渡り、彼を英国に連れて返る。その後、マネット家にとってかけがえのない友人となる。革命が勃発し、銀行業務のためにパリに行くが、そこでルーシーとマネットと出会い、ダーネイの救出を手伝う。

ミス・ハヴィシャム 『大いなる遺産』

金持ちだが、変人と思われている年配の女性。結婚式当日の朝、婚約者に捨てられて以来、サティス・ハウスという荒涼とした屋敷で日光を遮断し、色あせた花嫁衣装を着たままの生活を送っている。犯罪者の娘エステラを最初は善意で引き取るが、いつの間にか全男性に復讐するための美しい道具として育ててしまう。

ニコデマス・ボッフィン 『我らが共通の友』

ハーマンの信頼厚かった部下。ハーマンの息子ジョン・ハーマンが死んだことになり、遺言により10万ポンドほどの財産の受取人となる。ジョンと結婚するはずだったベラ・ウィルファーの失望を慰めるために彼女を養女とする。